【コラム】「キャンペーンマネージャー」の役割を2020年に考える

キャンペーンマネージャー

90年代に生まれた「アドサーバー」を2020年に考える

「キャンペーンマネージャー」とは何かを一言で表すとすれば「クリエイティブをホストして様々なウェブサイトに配信するツール」です。こうした仕組みのことを「アドサーバー」と言います。この「アドサーバー」は検索連動型広告もスマートフォンもない90年代に生まれた仕組みです。ただ、2020年現在に運用型広告の世界にいる我々からすると、正直に言ってあまり馴染みのないツールですよね?

前回の記事でも触れましたが、90年代のインターネット広告は、今のようにGDNやYDNなどのアドネットワークが整備されていなかったので、雑誌のように各ウェブサイトを運営する会社に直接発注をして広告枠を買付けていました。様々なウェブサイトの広告枠を買い付けて管理する会社のことを「メディアレップ」と呼びます。Yahoo!Japanの広告枠を主に管理していたCCIと、Infoseekなどの広告枠を管理していたDACが「メディアレップ」として登場しました。(注:今では2社とも様々な領域に広げているので純粋に「メディアレップ」だけを行っているわけではありません。)

メディアレップの役割

ウェブサイトの数が膨れ上がるにつれて、それぞれのウェブサイトに手作業でクリエイティブの入稿を依頼していくのが煩雑になってきたため、クリエイティブをそれぞれのウェブサイトに個別にホストしてもらうよりも、独立したサーバーに保存して、URLの形で配信したほうが効率が良いということで、この「アドサーバー」が登場しました。

アドサーバーの役割

また、当時のインターネット広告は基本的にはインプレッション保証のCPM課金で広告枠を販売していたのですが、それぞれのウェブサイトからのレポートの項目やインプレッションの定義がバラバラで、パブリッシャー側がレポート上のインプレッションの数を水増ししてしまう恐れもありました。このようなレポートの数値を標準化するという意味でも「アドサーバー」の存在意義は大きなものだったと思います。これが、「キャンペーンマネージャー」が「3rd Party 計測ツール」としての側面を持つ由縁でもあります。

ちなみに、古くからこの業界にいる人達はこの「アドサーバー」のことを「3PAS」(Third Party Ad Serving、スリーパス)と呼んだりしています。また、この3PASのことを日本語で「第三者配信」と呼びます。

「リッチメディア」配信ツールとしての「キャンペーンマネージャー」

しかしながら、2020年に運用型広告の世界に携わっている我々にとっては、この「アドサーバー」は馴染みのないものですよね? その理由はGDN(Google Display Network)やYDN(Yahoo! Display Network)に代表される「アドネットワーク」の登場によるものです。Google広告や、Yahoo!広告の管理画面からディスプレイ広告を配信する時に、クリエイティブの素材を入稿しますよね? そうなんです、「アドサーバー」の役割も「アドネットワーク」自体が担っているからです。GDNは日本のインターネット人口の9割にリーチできると言います。つまり、「アドサーバー」を使って人の手で様々なウェブサイトにクリエイティブを配信していく意味が失われてしまったわけです。これが2020年の我々にとって「アドサーバー」に馴染みがない理由かと思います。

GDNやYDNを始めとする「アドネットワーク」が全盛になっていくなかで、「キャンペーンマネージャー」もその立ち位置を変え、「リッチメディア」の配信ツールとして進化を遂げてきました。「アドネットワーク」が「アドサーバー」の役割を担ったものの、入稿できるクリエイティブ素材は150KBまで、などと比較的小さい容量に押さえられています。クリエイティブ素材の中で動画を表現したり、カーソルを動かしたりするような「ユーザーにリッチな体験を提供するクリエイティブ」(=リッチメディア)を「アドネットワーク」での広告配信では提供できませんでした。

リッチメディアの種類のひとつ「プッシュダウン」広告 (参照:Google Studioヘルプ)
Rich Media Gallery

そういった背景もあって、「キャンペーンマネージャー」は単純にクリエイティブ素材をホストするツールという立ち位置から、「『リッチメディア』をホストするためのツール」にその立ち位置を変更していきました。この影響で、リッチメディア作成ツールとして登場してきたのがGoogleマーケティングプラットフォームの「スタジオ」、旧「DoubleClick Studio」です。「スタジオ」と「キャンペーンマネージャー」や「ディスプレイ&ビデオ360」を連携させることで、リッチメディアを配信することができるようになります。

海外では、動的リマーケティング広告などで顕著なように、媒体が用意したデフォルトの広告枠だとどの広告主も画一的な表現になってしまいブランドを表現できない、ということでリッチクリエイティブで動的リマーケティングを配信する事例が日本よりも多いように思います。(あくまでも個人の観測の範囲ですが。)ユーザーにより良い広告体験を提供するために我々が努力できる領域のひとつではないかと個人的に感じています。

「3rd Party 計測ツール」としての「キャンペーンマネージャー」

ここまで、「アドサーバー」としての「キャンペーンマネージャー」について振り返ってきましたが、Google マーケティングプラットフォームの中での「キャンペーンマネージャー」の立ち位置となると「3rd Party 計測ツール」としての姿が浮かび上がってきます。

Googleの公式の資料の中にも「キャンペーンマネージャーを使って広告のデータを一元管理しましょう」という話が出てきていたりします。「はて? キャンペーンマネージャーって『アドサーバー』でしょ? そんな機能ってあったかな?」と疑問に思っている方は潜在的に多くいるのではないでしょうか。

私自身も、Googleの説明を聞いて「広告配信データの一元管理」とは一体何のことを指しているのか疑問が浮かぶことがありますが、私の理解では下記の2点です。

  1. Floodlightタグを活用した媒体間のコンバージョンの重複の排除
  2. インプレッションピクセルとクリックトラッカーを活用した各媒体を横断した計測

また「Floodlightタグ」「インプレッションピクセル」「クリックトラッカー」という聞き慣れない言葉が出てきましたので解説してみたいと思います。

Floodlightタグを活用した媒体間のコンバージョンの重複の排除

「Floodlightタグ」を一言で表すとするならば、「Googleマーケティングプラットフォーム共通のコンバージョンタグ」です。わかりやすくする意味で安易に「コンバージョンタグ」という単語を使ってはしまいましたが、正確にはFloodlightタグの役割は下記の3点です。

  • コンバージョンなどのイベントの計測(「Floodlight アクティビティ」で定義)
  • リマーケティング用のリストの蓄積
  • Floodlight変数を活用した商品ID・CRM-IDなどの動的な取り込み

よくその仕様を確認していくと、Google広告の媒体タグというよりはGoogleアナリティクスのタグやCriteoのタグに性格が近いなと個人的に感じています。

各広告媒体のインプレッションやクリックを後述の「インプレッションピクセル」「クリックトラッカー」で計測することで、コンバージョンをFloodlightタグで計測することが可能になります。これによって各広告媒体間で発生するコンバージョンの重複を排除することができるようになります。

仮に、あるユーザーがFacebook広告、Yahoo!広告、Google広告を経由してコンバージョンをしたと仮定します。実際にコンバージョンしたユーザーは1人なのに、それぞれの管理画面でコンバージョンが計測されてしまうので、コンバージョン数としてはとして計測されてしまいます。Floodlightタグをコンバージョンポイントとすることで、このような重複を排除することができるので、広告のより正確な評価をしたい場合に活用するすることをお勧めします。

「インプレッションピクセル」と「クリックトラッカー」

「インプレッションピクセル」と「クリックトラッカー」という新しい単語が出てきました。これらは名前の通り、広告のインプレッションとクリックを計測する仕組みです。

「キャンペーンマネージャー」を使うと、1×1ピクセルのイメージタグを発行することができます。

「インプレッションピクセル」タグの設置イメージ図

この1×1ピクセルを各媒体の広告枠のHTMLファイルに仕込むことで、広告枠が表示されるたびに「キャンペーンマネージャー」にデータが送信され、インプレッションの回数が計測できるようになります。言い換えるならば、元々の「アドサーバー」としての機能を応用して画像のない広告を配信している状態と言うことができるかもしれません。

「クリックトラッカー」は、ランディングページのURLの到達の前に「キャンペーンマネージャー」のサーバーを経由させること(=「リダイレクト」)でクリックを計測する仕組みです。このリダイレクト方式はランディングページの表示に時間がかかってしまうので、Googleは並行トラッキングを推奨しています。

並行トラッキングの概念図 参照:Google広告ヘルプ

実際の利用用途は次回以降に解説します!

さて、ここまで「キャンペーンマネージャー」の役割の変遷や、基本的な機能を解説してきました。後半は少し技術的な単語が多く出てきたので少し理解するまでに時間がかかったかもしれません。「キャンペーンマネージャー」は実際どんな時に使うの?という疑問に関しては次回以降にお話していきたいと思います。

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この記事を書いた人
杓谷 匠

1984年生まれ。2008年に新卒でGoogleに入社して以来、一貫して運用型広告の世界に従事。2010年にスタートアップに参画するも、川原で膝を抱える日々を経験。その後、Tripadvisor、Google、ATARAを経て、2019年に英国に籍を置く世界最大級のGMPパートナーJellyfishの日本法人の立ち上げに参画。

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