Google マーケティングプラットフォームとは
「Googleマーケティングプラットフォーム」と聞くと、馴染みのない方の中にはもしかしたらGoogleがまた新しい広告製品を出したのかな?と思うかたもいらっしゃるかもしれません。改めて「Google マーケティングプラットフォーム」とは何かというところから振り返っていきたいと思います。
2018年、GoogleはDoubleClick製品群を「Google マーケティングプラットフォーム」に改称することを発表しました。



具体的には下記のDoubleClick製品群が改称され、「Google マーケティングプラットフォーム」のブランド傘下に組み込まれました。
- DoubleClick Search(検索広告統合管理ツール) → 検索広告360
- DoubleClick Bid Manager (GoogleのDSP)→ ディスプレイ&ビデオ360
- DoubleClick Campaign Manager(アドサーバー) → キャンペーンマネージャー
- DoubleClick Studio (リッチメディア制作ツール) → スタジオ
また、「Google アナリティクス360スイート」と呼ばれていた下記のプロダクト群も「Google マーケティングプラットフォーム」ブランドの傘下に統合されました。
- Googleアナリティクス360
- Google タグマネージャー360
- Googleオプティマイズ360
- データポータル
「Google マーケティングプラットフォーム」とはひとつの製品のことを指すのではなく、上述のプロダクトすべての総称となります。下の図の中で、円でそれぞれの製品がつながっていることが大きな特徴のひとつです。Google アナリティクスのデータを検索広告360やディスプレイ&ビデオ360などに利活用できるように構想されているところは注目しておくべきポイントかと思います。


この他にも、「DoubleClick For Publisher」と呼ばれていた広告枠の管理ツール(SSP)は「Google アド マネージャー」に改称されています。
「バナー広告」の草分け的存在だったDoubleClick
上述の通り、「Google マーケティングプラットフォーム」には旧DoubleClick製品が含まれていますので、少しだけDoubleClickについて触れていきます。


DoubleClickの創業は古く、Googleが設立される1999年より3年前の1996年から広告ビジネスを展開していました。90年代のインターネット広告ビジネスに関して筆者は当事者ではないのですが、当時は検索連動型広告もなく、スマートフォンもありません。インターネット広告といえば、ポータルサイトのトップページなどに表示される「バナー広告」、今で言う「予約型ディスプレイ広告」が主流でした。インプレッション保証でCPMでポータルサイトのトップページなどのバナー枠を販売していたわけです。
90年代の後半になると、大手のメディア会社が参入し、巨大な資本を背景にポータルサイトが乱立していきました。インターネットの入り口を誰が抑えるかという「ポータル戦争」の幕開けです。それぞれのポータルサイトにひとつずつクリエイティブを入稿していく作業が煩雑になってきたので、クリエイティブ素材をサーバーに保存して、URLで呼び出して表示させる「アドサーバー」が登場しました。DoubleClick社の「アドサーバー」が現在の「キャンペーンマネージャー」(旧DCM)です。
また、それぞれのポータルサイトも、実際には広告枠がすべて売り切れるわけではなかったので、それらの広告枠をまとめて「アドネットワーク」を作り、DART(Dynamic Advertising Reporting & Targeting)というブランドで配信していました。今ではGDN、YDNなどアドネットワークに広告を出稿することは当たり前になっていますが、当時はそれそれのポータルサイトが広告主に営業をすることが一般的で、「アドネットワーク」は広告主、パブリッシャー双方にとってとても画期的な仕組みでした。
そういった背景もあって、DoubleClickは「バナー広告」の配信に関して草分け的な存在になっていきました。
検索連動型広告の登場とその余波
2001年にOverture、Googleを中心とした検索連動型広告が登場すると、爆発的にインターネット広告の市場が拡大していきました。オークション形式の入札方式はそれまでの「バナー広告」市場にも影響を及ぼし、DSP(Demand Side Platform)、SSP(Suply Side Platform)、RTB(Real Time Bidding)の登場を促しました。
ここではDSP、SSP、RTBの仕組みについて詳細は触れませんが、DoubleClick Bid Manager(現在の「ディスプレイ&ビデオ360」)、DoubleClick for Publisher (現在の「Google アド マネージャー」)が登場します。広告主にとって理論上1インプレッションあたりの広告収益が高くなるDSP、SSP、RTBの仕組みは広く受け入れられていくことになります。
また、DoubleClickは今で言うオーディエンスターゲティングの草分け的な存在でもあり、Cookieを活用することで「人」をベースにターゲティングする仕組みを整備していったことも革新的な出来事だったのではないかと思います。
GoogleによるDoubleClickの買収
検索連動型広告の次の一手としてGoogleはディスプレイ広告の分野にも参入します。AdSenseを発表して個人サイトなどが収益化できる仕組みを整備していきました。当時のGoogleのディスプレイ広告は「Google コンテンツネットワーク」(以下GCN)と呼ばれていて、ウェブサイトのコンテンツの内容に関連した広告を表示させる仕組みでした。検索エンジン自体が世界中のウェブサイトをクローリングして内容を解析するものだったので、その仕組を応用したわけです。
一方で、ディスプレイ広告市場は有名ポータルサイトの主要な広告枠をDoubleClickが抑えていたので、人気ポータルサイトのトップページなどの一番良い広告枠に食い込むことに苦戦していました。ロングテールでは圧倒的に強かったAdSenseもヘッドの部分で苦戦していたわけです。


そういった状況もあって、Googleは2007年にDoubleClickの買収を行います。また、DoubleClickが保有するCookieの技術をAdWordsに組み込み、「Googleコンテンツネットワーク」を「Googleディスプレイネットワーク」としてリブランディングします。
GoogleがDoubleClickを買収したことで下記の3点が普及していきました。
- DSP・SSP・RTB
- リマーケティング広告
- アトリビューション分析
Cookieを活用してひとりのユーザーの行動を可視化することができるようになったので、アトリビューション分析なども盛んに行われるようになりました。こうして振り返るとDoubleClickとGoogleがインターネット広告業界にもたらしたインパクトはとても大きかったように思います。
「Googleマーケティングプラットフォーム」のこれから
これからの「Google マーケティングプラットフォーム」の方向性を一言で表すのであれば、ファーストパーティーデータを活用した広告配信と言えるでしょう。前からある言葉を使うとすれば「プライベートDMP」の進化系と言えるかもしれません。
鍵となるプロダクトは「Google アナリティクス360」です。Googleアナリティクスに蓄積されたウェブサイトの行動データに自社の保有するファーストパーティーデータを連携し、検索広告360、ディスプレイ&ビデオ360、Google広告に活用していきます。このようなGoogleアナリティクスの活用方法を、Googleは「Googleアナリティクス as Soft DMP」として提唱しています。
そういった意味では昔からGoogle アナリティクスに慣れ親しんでいる方にとっては特に新しいことではありません。一方で、Googleアナリティクス360はGoogle Cloud Platform(以下GCP)のBigQueryと連携しているので、BigQuery上でデータを加工したり、GCPの機械学習モジュールを使って予測LTVを算出したりすることも出来るようになっています。
Shakky’s Notesでは「Googleマーケティングプラットフォーム」各プロダクトについて解説したり、最新のニュースを翻訳してお届けするほか、上述のような使い方なども解説していきたいと思います。とはいえ、私自身もまだまだすべての機能を把握しているわけではないので、ある意味私の勉強の成果、というスタンスで記事を公開していければと思っています。
みなさまにとって有益な情報となるように頑張りたいと思いますので、今後ともお付き合いいただければ幸いです。